河鍋暁斎(1931年-1889年)は、浮世絵、狩野派をはじめ多様な流派に学びながら独自の画法を確立し、幕末から文明開化期にかけて仏画、美人画、花鳥画から風刺画まで幅広い作品を世に出した絵師です。明治十四年(1881年)に第二回勧業博覧会に枯れ木にとまる鴉を描いた『枯木寒鴉図』(榮太樓総本舗蔵)を出展して最高賞を受賞し、名声を高めました。名倉医院にも、同様の構図の墨画が伝わっており、暁斎の鴉図に対する評判の高まりを背景に制作された作品であると考えられます。
河鍋暁斎の作品を多く保管する河鍋暁斎記念美術館には、名倉彌一の依頼を受けて制作されたとされる鍾馗図が伝わっており暁斎と名倉家の関係を物語っています。
(参考文献:『文遺産調査特別展 大千住 美の系譜 -酒井抱一から岡倉天心まで-』図録足立区立郷土博物館、2018.10)