成長期野球肘
成長期野球肘は、主に投球動作を繰り返すスポーツを行うことで肘に負担がかかり炎症や損傷が生じるスポーツ障害の一つです。骨端線が閉鎖する前に発生するのが成長期野球肘で、閉鎖後に発生すると成人期野球肘と呼ばれます。成長期野球肘は「外側型」、「内側型」、「後方型」があり、外側型は上腕骨小頭に発生する離断性骨軟骨炎のことを指します。成長期の骨や軟骨はまだ完全に成熟していないため、繰り返しのストレスによる損傷を受けやすく、いずれの型においても一度発生したらスポーツ活動は休止し肘の安静が必要となります。早期発見・治療が重要で、放置すると競技復帰が難しくなる場合があります。
どのような人に多いか
骨端線は14〜17歳頃に閉鎖しますが、その前の小・中学生に発生します。この頃の骨の成長が盛んな時期に投球動作を頻繁に行うスポーツ選手に多く発生し、特に週の練習時間が16時間を超えると発生リスクが高まるといわれています。また不自然なフォームでの投球は肘への負担を増大させ、発症要因となります。このように野球肘の発生は練習時間だけではなく、投球フォームも関与していると考えられています。
主な症状
投球動作を行うと肘の内側、外側、または後方に痛みが生じます。進行すると、肘の可動範囲が狭くなり、普段の生活の中においても肘の痛みを認めることがあります。関節内に遊離体というものが形成された場合は、肘がロックしたように動かなくなる症状を認めます。
「内側型」では尺骨神経障害による前腕から手指の痺れを認めることもあります。
診断
投球動作を伴うスポーツの練習日数や時間を聴取し、身体診察として肘の動く範囲や圧痛点を調べ、ストレステストを行います。画像検査としてはレントゲン画像で成長軟骨の損傷や遊離体の有無などの骨変化を確認します。MRI画像では軟骨や靭帯の損傷、神経障害の有無などを詳しく評価できます。超音波検査は簡便に肘の状態を確認できます。
治療
「外側型」、「内側型」、「後方型」いずれにおいてもまずは投球動作を中止し肘の安静を図ります。
「外側型」の場合、障害を受けた上腕骨小頭の修復を第一に優先するため投球動作のみならず腕立て伏せやバッティング、鞄を持つ動作も控えます。通常6~12ヶ月は投球禁止となります。遊離体が見られる場合はギプス固定を一定期間行うこともあります。定期的に通院してレントゲン画像で修復状態を確認しますが、安静加療を3ヶ月程度継続しても修復が得られない場合は手術も検討されます。修復確認後も野球への復帰は慎重に行い、いきなり全力投球はしないようにします。
「内側型」は3週間程度の安静でおおよそ症状は改善します。その後は徐々にプレー復帰を目指します。但し、投球は塁間の半分の距離で20球程度のキャッチボールから開始して、2~3週かけて徐々に投球数や強度を高めながら完全復帰を目指します。
運動療法は病期や病態をみながら適切なタイミングで介入することが大切です。
予防のために
年齢に応じた投球回数の管理を徹底し、投球フォームを専門家にチェックしてもらい、肘への負担を減ら酢用にしましょう。投球は塁間の半分の距離で50%の強さで20球のキャッチボールから開始します。徐々に投球数・距離・強度を上げながら、およそ1ヶ月半後に完全復帰するようにします。復帰後も定期的な通院をしてレントゲン画像検査を行うことが大切です。
また、投球時に上半身だけでなく体全体を使えるよう筋力トレーニングを行いましょう。投球後は肘をしっかり休ませて下さい。
野球肘は早期の対策と適切な治療で予後が良好なことが多いスポーツ障害です。もし症状が気になる場合は、早めに整形外科を受診して下さい。
当院のご紹介
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