外脛骨障害(有痛性外脛骨)

外脛骨は、すべての方に存在するわけではなく、生まれつき舟状骨の内側に余分に形成される副骨(過剰骨)の一種です。本来、成長過程で舟状骨と癒合するはずが、結合しきれず残存することで、外脛骨として観察されます。
痛みの原因
外脛骨は、通常、繊維軟骨を介して舟状骨に接続しており、この“軟骨結合部”が衝撃や繰り返しの負荷により炎症を起こしやすくなります。
また、足の内側アーチを支える「後脛骨筋腱」は、舟状骨と外脛骨の両方に付着しています。この腱に過度な緊張が加わると、外脛骨にも牽引力が作用し、痛みや腫れを生じることがあります。
主な症状
・足の内側(舟状骨周辺)の圧痛や腫れ
・運動時(ジャンプ時)やランニング後の痛み
・靴による圧迫での不快感や痛み
・押すと膨らみを触れることがある
炎症が進行すると、安静時や日常の歩行でも痛みが出ることがあります。
原因
1. 運動による過度な負荷
スポーツ活動や長時間の歩行により、後脛骨筋腱が過剰に使われ、外脛骨への牽引力が強まります。
2. 扁平足
土踏まずのアーチが低下していると、足の内側に負担が集中し、後脛骨筋腱へのストレスが増加します。
3. 靴による圧迫
外脛骨は足の内側に突出することが多く、硬い靴やフィットしない靴による圧迫で周囲組織に炎症が起こることがあります(滑液包炎を伴うことも)。
4. 成長期の骨の未癒合
思春期は骨成長の過程で未癒合が起こりやすく、運動との相乗効果で症状が出やすくなります。
診断と検査
診断にあたっては、まず視診および触診を行い、足の内側に膨らみ(膨隆)や圧痛があるかどうかを確認します。外脛骨障害では、舟状骨内側の突出や圧痛が特徴的にみられます。
次に、X線検査(レントゲン)を用いて、外脛骨の有無やその形態、舟状骨との位置関係を評価します。これにより、外脛骨が存在しているかどうか、またその分類(タイプ)も把握することが可能です。
さらに、炎症の程度や軟部組織の状態を詳しく調べる必要がある場合には、MRI検査を行います。MRIでは、骨や腱、滑液包などの軟部組織の変化を高精度で描出できるため、痛みの原因となる部位の特定や治療方針の決定に役立ちます。
治療
1. 保存療法(非手術的治療)
・安静とアイシング
炎症が強い場合は、運動を制限し、患部の冷却や消炎鎮痛剤で症状を和らげます。
・足底板(インソール)
足のアーチを補正し、後脛骨筋腱への負荷を軽減するため、特に扁平足の方に有効です。
・物理療法・リハビリ
ストレッチや筋力強化が再発予防に役立ちます。特に後脛骨筋や足部周囲の柔軟性と安定性の向上がポイントです。
・靴の見直し
足に合った、柔らかくクッション性のある靴を選ぶことが大切です。紐靴で足の内側をしっかり固定する工夫も有効です。
2. 手術療法(症状が慢性化した場合)
保存療法で効果が得られない場合、以下のような手術を検討します
・外脛骨の摘出術
・後脛骨筋腱の付着部再建術(舟状骨への移行)
手術は慎重に判断されるべき選択肢であり、必ず整形外科専門医と十分に相談しましょう。
症状の程度や治療開始時期によって異なりますが、保存的治療で数週間~数ヶ月以内に改善が期待できます。再発を防ぐには、継続的なストレッチや足底板の使用、靴の工夫が欠かせません。
まとめ
外脛骨障害は、先天的に存在する副骨が原因で、後脛骨筋腱への負荷や靴の圧迫によって痛みを引き起こす疾患です。スポーツをする若年層や扁平足の方に多く、早期対応が重要です。
足の内側に違和感や痛みを感じた場合は、無理をせず、整形外科専門医の診察を受けましょう。適切な治療を行うことで、スポーツへの復帰や日常生活への支障を最小限に抑えることが可能です。
当院のご紹介
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