鎖骨骨折

鎖骨骨折(さこつこっせつ)は、日常生活での転倒やスポーツ外傷などによって起こりやすい外傷です。
小児から高齢者まで幅広い年代に発生し、適切な診断と治療により良好な経過をたどることがほとんどです。
本記事では、特に発生頻度が高い鎖骨骨幹部骨折と、治療に注意が必要な鎖骨遠位端骨折の2つに分けて解説します。
右鎖骨骨幹部での骨折(赤丸が骨折部)
鎖骨骨幹部骨折
特徴と原因
鎖骨の中央付近に起こる骨折で、鎖骨骨折全体の約70〜80%を占める最も一般的なタイプです。
骨が細く周囲の靭帯による支持が少ないため、転倒や外力で折れやすい部位です。
典型的には、転倒して肩から地面に衝突、あるいは手をついた衝撃が鎖骨に伝わることで生じます。
症状
強い痛みと腫れ、肩のラインの変形を認めます。また骨折部に段差ができ、皮膚の下で骨片が触れることもあります。
患側の腕を健康な手で支える姿勢をとることが多いです。
治療
鎖骨骨幹部骨折の治療は、まず保存療法が第一選択となります。
具体的には、三角巾やクラビクルバンドといった固定具を用いて肩を安定させ、通常4〜6週間ほどの固定を行います。
この間は、鎮痛薬を併用しながら痛みを抑え、できる範囲で日常生活動作を維持していきます。
一方で、以下のような場合には手術が検討されます。
骨片のずれが著しく自然な治癒が期待できない場合、骨片が皮膚に突出して皮膚壊死の危険がある場合、あるいは神経や血管の損傷を伴っている場合です。
こうしたケースでは、より安全かつ確実な治癒を得るために手術治療が選択されます。
鎖骨遠位端骨折
特徴と原因
鎖骨の肩に近い部分で発生する骨折で、全体の約15〜20%を占めます。
靭帯(烏口鎖骨靭帯)が切れると骨折部が不安定になり、癒合不全(偽関節)を起こしやすい点が特徴です。
原因はスポーツ中の転倒や交通事故による直接外力が多くみられます。
症状
・肩の外側の腫れや変形
・腕を上げたり肩を動かした時の強い痛み
・鎖骨骨幹部骨折と比べ肩の動きにより痛みが誘発されやすい
治療
鎖骨遠位端骨折の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法は、骨片のずれが小さい場合に選択されます。三角巾で4〜6週間ほど固定し、自然な骨癒合を待ちます。
ただし、この部位の骨折は偽関節化(骨がくっつかない状態)のリスクが比較的高いため、経過観察を慎重に行うことが重要です。
一方で手術療法が必要となるのは、骨片のずれが大きい場合や、靭帯損傷を伴って不安定性が強い場合、あるいは骨癒合不全のリスクが高いと判断される場合です。
手術では、プレート固定やワイヤー固定などを用いて骨片を安定させ、確実な骨癒合を目指します。
まとめ
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鎖骨骨幹部骨折は発生頻度が最も高く、多くは保存療法で良好に治癒します。
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鎖骨遠位端骨折は偽関節のリスクが高く、手術適応となることが少なくありません。
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いずれの骨折も、適切な固定とリハビリにより多くの方が日常生活やスポーツに復帰できます。
肩や鎖骨に強い痛みや変形を感じた場合は、早めに整形外科専門医を受診してください。
当院のご紹介
症状やご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
およそ250年前から千住の地で親しまれてきた名倉医院の分院として、その歴史の中で培われた知識や技術を土台として最新の医療を提供しております。
※手術やより高度な治療が必要と判断された場合は、適切な医療機関へご紹介させていただいております。
