クラウンデンス症候群

クラウンデンス症候群は、上位頚椎である軸椎の歯突起周囲にピロリン酸カルシウムが沈着し、炎症を引き起こす疾患です。別名「頚椎偽痛風」とも呼ばれ、ご高齢の方に多く見られます。症状は予兆なく現れ、急激で激しい首の痛みが特徴ですが、予後は一般的に良好な疾患とされています。
クラウンデンス症候群とは?
クラウンデンス症候群は、第2頚椎(軸椎)の歯突起周囲にピロリン酸カルシウム結晶が沈着し、炎症を引き起こす疾患です。
関節に尿酸結晶がたまる「痛風」に似た病態であることから、「偽痛風」と呼ばれることがあります。特に頚椎で起きるタイプがこの疾患であり、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)の一種です。
レントゲンやCT画像で歯突起の周囲に王冠(クラウン)状の石灰化像が認められるため、この名前が付けられました。
症状の特徴
予兆のない突発的な強い首の痛みが本疾患の特徴です。
次のような訴えが多く聞かれます:
- ⭐︎ 朝起きたら突然首が激しく痛む
- ⭐︎ 首をまったく動かせない(可動域制限)
- ⭐︎ 頭を支えるのも困難になる
- ⭐︎ 38度前後の発熱を伴うことがある
- ⭐︎ 肩こりとは明らかに異なる激痛
65歳以上に多くみられますが、若年層でも起こることがあります。
診断のポイント
診断には慎重な判断が求められます。通常のレントゲンでは明らかな異常が見つからないことも多く、高解像度CTでの画像評価が不可欠です。
主な診断基準:
- ⭐︎ 外傷や誘因がないのに突然発症した首の激痛
- ⭐︎ 首の可動域が著しく制限されている
- ⭐︎ CT検査で歯突起周囲にクラウン状の石灰化を認める
- ⭐︎ 血液検査で炎症反応 (CRP上昇・白血球増加) を確認
加えて、髄膜炎や化膿性椎間関節炎、リウマチ性多発筋痛症などとの鑑別も重要です。発熱を伴う場合には感染症の可能性も考慮します。
治療法と予後
この疾患は、基本的に保存的治療(手術をしない治療)で改善が期待できます。
主な治療内容:
- 1.安静と頚椎カラー装着
首の負担を軽減し、炎症を鎮めます。 - 2.薬物療法
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、必要に応じてステロイド薬を短期間使用します。 - 3.リハビリ
症状が落ち着いた段階で、首周りのストレッチや筋力強化を行います。
ほとんどの方は数日〜2週間以内に症状が改善します。再発は比較的少ないとされますが、再発予防の確立された方法は現在のところありません。
日常生活の注意点
予防法は明確ではありませんが、再発や首回りのこわばりを防ぐためには、日頃の首のケアが重要です。
- ・長時間同じ姿勢を避ける
- ・首・肩のストレッチを日課にする
- ・枕の高さを調整する(程よい高さ)
- ・肩こりや首の張りを放置しない
まとめ
クラウンデンス症候群は、突然の激しい首の痛みを引き起こす炎症性疾患ですが、適切な診断と、保存的治療で十分に改善が期待できます。
重要ポイント:
- ・前触れのない急性の首の激痛が特徴
- ・高解像度CTと血液検査が診断の決め手
- ・多くの場合、鎮痛薬で数日〜2週間で改善
- ・再発はまれだが、日常の首ケアが重要
当院のご紹介
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