上腕骨外側顆骨折

上腕骨外側顆骨折とは、肘関節を構成する上腕骨(じょうわんこつ)の遠位部(肘に近い端)にある「外側顆(がいそくか)」と呼ばれる部分が折れてしまう骨折です。
外側顆は、肘の外側に位置する出っ張った部分で、成長期の子どもでは軟骨成分が多く含まれています。そのため、大人に比べて比較的弱く、軽い外力でも骨折が生じやすいのが特徴です。
症状
上腕骨外側顆骨折には下記のような症状があります。
・肘の外側に鋭い痛みが生じる
・腫れや内出血がみられる
・肘の曲げ伸ばしを嫌がる
・腕を動かしたがらない
・肘の変形
・指先の感覚鈍麻、手首・指の動きの悪さ
(神経や血管の損傷を伴うこともあり、緊急対応が必要です)
発症のメカニズム
上腕骨外側顆骨折の多くは、「転んで手をついたとき」に発生します。医学的には「FOOSH(Fall On Outstretched Hand)」と呼ばれ、手を伸ばした状態で地面に着いて体を支えようとした際に、前腕から肘へと衝撃が加わり、外側顆に強い負荷がかかります。
骨折が起こるメカニズムとしては、主に次の2つの理論が提唱されています
・押し上げ理論
転倒時に前腕の橈骨頭(とうこつとう:親指側の骨の上端)が外側顆に衝突して骨折を引き起こす。
・引きはがし理論
転倒により手関節を反らす筋肉(手関節伸筋群)が強く収縮し、腱が外側顆を引きはがすようにして骨折を生じさせる。
実際には、これらの要因が複合して骨折に至ることが多いと考えられています。そのほか、肘の外側への直接的な打撲や、腕をひねる強い力によっても起こることがありますが、これらは比較的まれです。
治療
治療法は、骨折の程度やずれ(転位)の有無によって異なります。
軽度の骨折(転位が少ない場合)ギプス固定による保存療法を行います。通常、4〜6週間程度の固定期間が必要です。
骨片が大きくずれている場合や関節面に影響する骨折:
「観血的整復固定術」という手術治療が必要になります。手術は金属製のピンやスクリューを用いて、骨を正しい位置に固定します。手術後のリハビリも重要で、肘の可動域や筋力を回復させるために理学療法士の指導のもとで行います。
後遺症を防ぐためには:
骨癒合後も、リハビリテーションを適切に行うことで、肘の動きや日常動作を早期に取り戻すことが可能です。
予防
上腕骨外側顆骨折を完全に防ぐことは難しいですが、以下のような対策を心がけることで、転倒リスクを減らすことができます。
・家の中では階段に滑り止めを設置し、床の整理整頓を徹底しましょう。
・公園や遊び場では、お子さまの年齢や発達に合った遊具を選び、大人がそばで見守りましょう。
・スポーツや運動前には十分な準備運動を行い、無理のない練習を心がけましょう。
もしお子さまが転倒後に肘の痛みを訴える場合は、無理に動かそうとせず、患部を冷やして安静を保ち、速やかに整形外科を受診してください。
当院のご紹介
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およそ250年前から千住の地で親しまれてきた名倉医院の分院として、その歴史の中で培われた知識や技術を土台として最新の医療を提供しております。
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