痛みの定義
国際疼痛学会によると、痛みは次のように定義されています。
「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」(日本疼痛学会訳)」
つまり痛みは情動的な要素が含まれ、精神的な要素も関与しています。従って痛みに対する理解が進むと痛みとの向き合い方に変化が生じるでしょう。
痛みは不快なものですが、必ずしも不要なものではありません。生まれつき痛みを感じない稀な遺伝性の疾患があり、その方々は痛みを感じないことが逆に生命を脅かすことがあります。痛みは我々が身を守り、相手の痛みを理解し合いながら社会生活を営むために必要なものとも言えます。
痛みの分類
痛みは期間や機序によって分類されます。
期間で分けると下記のものがあります。
・急性疼痛
(1ヶ月以内に良くなる痛み)
・亜急性疼痛
(急性疼痛と慢性疼痛の間)
・慢性疼痛
(治療をしても3ヶ月以上持続する痛み)
次に機序で分けた場合下記の4種類があります。
・侵害受容性疼痛
打撲、火傷、切り傷、骨折など
・神経障害性疼痛
神経の圧迫・切断など
・痛覚変調性疼痛
痛みを感じる出来事が何度も続くことで、痛みを感じやすく過敏になりわずかな刺激でも自覚する痛み
・混合性疼痛
上記3つを含む痛み
侵害受容性疼痛は、私たちの体を守るために必要な痛みです。例えば骨折した時には骨がしっかり癒合するために骨折部を安静にする必要があります。痛みは「動かすと治りが遅くなる」という警告の役割を果たしているのです。
一方で神経障害性疼痛は、神経が損傷や圧迫を受けた際に生じる痛みです。この痛みは「電気が走る」「ジンジン灼ける」といった感覚があり、その強さが自己増幅したり、自然に発生することが多くあります。神経障害性疼痛は「危険信号としての痛み」を超え、むしろ「疾患」として捉えるべきでしょう。早期の鎮痛が重要で、放置すると慢性化するリスクが高まります。
痛覚変調性疼痛は、末梢の組織や神経に明確な原因がないにもかかわらず持続する痛みです。うつ状態や全身倦怠感、意欲低下などの症状も伴うことが多く、原因が分からないために医療機関を転々とするケースも少なくありません。
下行性疼痛抑制系
我々の体には、痛みを和らげる脳の機能である下行性疼痛抑制系というシステムが存在します。これは痛みが発生した直後にその痛みを和らげるものです。これは外敵からの攻撃時にすぐ逃げられるように本能的に備わっているものと考えられています。しかしこのシステムが機能しなくなると慢性痛に移行する確率が高まることが分かっています。近年の研究によると運動習慣は下行性疼痛抑制系の機能を向上させることが報告されています。
最後に
痛みの定義や分類について触れましたが、痛みは知覚的・感情的・認知的に脳で統合され、相互に作用して感じられます。強い痛みは大きなストレスとなり、慢性化すると不安が増し、「もっとひどくなるのではないか」「もう治らないのではないか」といった悲観的な思考に陥ることがあります。したがって、痛みの治療には薬物療法だけでなく、情緒的なサポートも非常に重要です。痛みと向き合うためには、理解とサポートが欠かせません。
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