肩腱板断裂

「腕を横から上げようとすると、途中で引っかかるようにズキッと痛む」
「夜中に肩の痛みで目が覚めてしまい、痛む側を下にして寝られない」
「反対側の手で支えれば腕が上がるのに、自分の力だけでは腕を保持できない」
このような症状でお困りではありませんか?
肩腱板断裂は、肩の深層にある板状の腱(腱板)が骨からはがれたり切れたりすることで、肩の痛みや筋力低下を引き起こす疾患です。
40代〜60代以降の中高年の方に非常に多く見られますが、症状が五十肩(肩関節周囲炎)と似ていることもあるため、そのうち治るだろうと自己判断して見過ごされがちです。
五十肩と決定的に異なるのは、切れてしまった腱板は自然に元の位置へくっつく(自然治癒する)ことはないという点です。
放置して断裂が広がってしまう前に、超音波(エコー)検査等による正確な鑑別診断を受けることが重要です。

疾患について
肩関節は人体の中で最も可動範囲が広い関節であり、上腕骨(腕の骨)の丸い頭が肩甲骨の浅いくぼみに乗る不安定な構造をしています。
この関節を安定させ、スムーズに腕を持ち上げるために機能しているのが、深層にある4つの筋肉の腱、腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)です。
加齢に伴って腱板の組織が少しずつすり減り(変性)、弾力性が失われていく中で、腕を上げた作業の繰り返しや、転倒して手をつく・重い物を持ち上げるといった負荷が加わると、骨に付着している腱板が切れてしまいます。
完全に切れてしまう完全断裂だけでなく、腱の表面や深部だけが傷つく不全断裂(部分断裂)も多く見られます。
またご高齢者では断裂していても痛みがない(無症候性断裂)方も珍しくありません。
症状の特徴と経過
五十肩との違いを意識することが見極めの鍵となります。
▪️ 腕を上げる途中での痛み
腕を下げているときや完全に真上まで上げたときは痛まず、途中の60度〜120度あたりを通過する瞬間に肩の外側に痛みが走ります。
▪️ 夜間痛
夜寝ている間に肩がズキズキとうずくように痛む事があります。
痛みが強いと、痛い肩を下にして寝ることができず寝返りのたびに目が覚めてしまいます。
▪️ 自力で支えられない(ドロップアーム)
他人の手で腕を頭上まで持ち上げてもらうと上がりますが、自力で腕を水平にキープしてくださいと言われると、力が入らず腕が落ちてしまいます。
▪️ 腕を動かしたときの音
腕を上げ下ろしする際、肩の奥で引っかかるような感覚や、擦れるような音がすることがあります。
なりやすい方の特徴
加齢による組織の脆さと、肩を酷使する環境が関係しています。
🔴 60代以上の中高年の方
腱板の加齢変化(変性)が進んでいるため、明らかな外傷がなくても自然に断裂することが珍しくありません。
🔴 腕を肩より上に挙げる作業が多い方
塗装工、大工、配管工、バレーボールやテニスなどのオーバーヘッドスポーツをされる方。
🔴 重い荷物を日常的に持ち運ぶ方
腕を強く引っ張られるストレスが日常的に肩へ加わっている方。
🔴 転倒して手や肘、肩を強く打った方
腱が傷んでいたところに急激な衝撃が加わることで断裂が完成します。
診断のポイント
肩腱板断裂の確定診断には、関節の拘縮(固まり)が主因である五十肩との厳密な鑑別が必要です。
主な診断アプローチ
⭐︎ 徒手検査
腕を持ち上げた状態から自力で保持できるか(ドロップアームテスト)や、医師の抵抗に抗って腕を外側に開く力(外旋筋力)が低下していないかを調べます。
⭐︎ レントゲン検査
肩峰(肩の屋根の骨)の骨棘の有無や、大結節の硬化像、上腕骨頭の上方移動(腱板が切れて骨が上にずれていないか)を確認します。
⭐︎ 超音波(エコー)検査
レントゲンには写らない腱板の断裂部(黒く抜ける断裂像)、腱のやせ細り、炎症による関節内の水(滑液包炎)をその場でリアルタイムに観察します。
⭐︎ MRI画像検査(連携機関での精査)
断裂の正確なサイズ(小断裂〜広範囲断裂)や筋肉の脂肪変性の度合いを立体的に把握し、手術適応を判断するため、提携画像診断センターにてMRI検査を手配します。
治療法
腱が切れていても、周囲の筋肉を上手に使えるようになれば痛みが取れ、日常生活に困らなくなるケースも多いため、まずは保存的治療から行います。
✅ 局所の安静と動作の是正
肩より高く腕を上げる動作や、重い荷物を持つ動作を控え、腱板への摩擦刺激を減らします。
✅ 関節腔内注射療法
痛みが強く夜眠れない急性期には、エコーで位置を確認しながら肩峰下滑液包内に局所注射(ヒアルロン酸や抗炎症薬等)を行い、炎症と痛みを速やかに鎮めます。
✅ 筋力トレーニング・運動指導
切れていない残りの腱板(インナーマッスル)や肩甲骨周囲の筋肉を鍛える体操をを行い肩関節の安定性を取り戻します。
*当院には理学療法は行なっていないため必要に応じて他の医療機関へご紹介致します。
✅ 手術(関節鏡視下手術)
数ヶ月保存治療を行っても痛みが引かない場合、筋力低下が著しく腕が上がらない場合、あるいは若年者や活動性の高い方で早期復帰を望む場合は、関節鏡を用いて切れた腱を骨に縫い付ける手術が検討されます。
その際は、肩関節専門医のいる提携総合病院へご紹介いたします。
日常生活の注意点
断裂部をこれ以上広げないための日頃の配慮が大切です。
・痛みをこらえて無理に肩を回さない
五十肩と勘違いして痛くても動かさないと固まると無理に体操やストレッチを繰り返すと、断裂部がさらに引き裂かれて拡大してしまいます。
・夜間痛を和らげる姿勢をつくる
仰向けで寝る際、痛む側の肘や手首の下にバスタオルを丸めて挟み、肩が後ろに落ちないように支えると夜間の痛みが大幅に和らぎます。
・重い買い物袋をぶら下げて持たない
腕を下に引っ張る力は腱板に強いテンションをかけます。荷物はリュックサックを使うか、抱えるようにして運んでください。
肩腱板断裂は、早い段階でエコー検査等によって断裂の有無と大きさを正しく把握し、適切な注射やリハビリを行うことで、手術をせずに普段の生活を取り戻せるケースが多くあります。
五十肩との違い
腱板断裂は「五十肩(正式には肩関節周囲炎)」と似た症状を呈するため、混同されることがあります。しかし、この2つは原因や治療方針が大きく異なるため、正確な診断がとても重要です。
五十肩は、関節包や周囲の組織に炎症が生じ、肩の動きが制限される「可動域制限」が主な症状です。痛みとともに肩が固まり、自分で動かせないだけでなく、他人に動かしてもらっても動かしにくい(他動制限)という特徴があります。
一方で、腱板断裂は肩を動かす筋肉の腱が切れてしまっている状態で、「筋力低下」が主な問題となります。自分で腕を持ち上げることが困難になりますが、他人に補助してもらえば腕を持ち上げることは比較的可能です。
さらに、腱板断裂では夜間痛が強く現れたり、重い物が持てなくなったりと、日常生活における力の入りにくさが目立ちます。特に高所での作業や髪を洗う・干すといった動作で支障を感じるようであれば、腱板断裂が疑われます。
このように、「動かせない」のか「力が入らない」のかが、腱板断裂と五十肩を見分ける大きなポイントになります。
「腕を上げると肩が痛む」「夜中に肩が痛くて目が覚める」といった症状がある場合は、我慢せず名倉医院駅前クリニックへご相談ください。
当院のご紹介
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およそ250年前から千住の地で親しまれてきた名倉医院の分院として、その歴史の中で培われた知識や技術を土台として最新の医療を提供しております。
※手術やより高度な治療が必要と判断された場合は、適切な医療機関へご紹介させていただいております。











