上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)

上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)は、肘の内側にある骨の突起(上腕骨内側上顆)に付着する腱(けん)が障害を受けて痛みが生じる疾患です。
腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、手首を手のひら側に曲げる筋肉や前腕を内側にひねる筋肉が付着しています。これらの筋肉を繰り返し使うことで腱に過度な負担がかかり、炎症や組織の変性が起こります。
従来は「腱炎」と呼ばれていましたが、近年では組織の変性が主体であることがわかり、「腱症」と表現されることが多くなりました。
腱症ではコラーゲン繊維が乱れ、腱が弱くなり、厚みや瘢痕(はんこん)が形成されることもあります。
重症例では壊死や石灰化を伴うこともあり、慢性的な痛みの原因になります。
原因
ゴルフ肘の主な原因は、前腕の筋肉を酷使することによる腱への慢性的な負担です。
・スポーツ活動
ゴルフのスイング動作はもちろん、野球の投球、テニス、アーチェリー、ウエイトトレーニングなどでも発症します。特に誤ったフォームや道具の不適切な使用(重いクラブ、合わないラケットのグリップなど)はリスクを高めます。
・職業性要因
配管工や大工など、手作業や工具を頻繁に使う方にも多く見られます。繰り返し強い握力を使う作業や長時間の反復動作が関与します。
・身体的要因
肩や体幹の筋力が弱いと、前腕の筋肉に負担が集中します。また、30〜50代の働き盛り世代に多いのも特徴です。
これらの要因が組み合わさることで、腱への負担が蓄積し発症につながります。
主な症状と診断
典型的な症状は肘の内側の痛みで、徐々に強くなるのが特徴です。
⚪️運動後や作業後の鈍い痛み
⚪️ドアノブを回す、瓶のふたを開ける、握手といった日常動作での痛み
⚪️朝のこわばりや、長時間同じ姿勢を続けた後の違和感
⚪️進行すると安静時にも痛みが続く
診断は問診と身体診察が中心です。肘の内側を押したときの圧痛や、手首を曲げる動作に抵抗を加えて痛みが誘発されるかどうかを確認します。
必要に応じてX線やMRI検査で腱の変性や他疾患を除外します。
治療
治療の基本は保存療法(手術を行わない治療)です。
・安静と動作制限
完全に活動を止める必要はありませんが、痛みを誘発する動作は避けましょう。
・冷却療法
運動後や作業後のアイシングは炎症や痛みの軽減に効果的です。
・薬物療法
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられ、痛みや炎症を抑えます。
・物理療法
超音波、レーザー、電気刺激などで血流改善や鎮痛効果を期待できます。
・理学療法
前腕のストレッチや筋力強化により柔軟性を高め、再発を防ぎます。
・装具療法
サポーターやテニス肘バンドは腱への負担を和らげます。
・注射療法
ステロイド注射は炎症を強く抑える効果がありますが、適応は慎重に判断されます。近年はPRP療法(自己血小板を利用した再生医療)も注目されています。
保存療法で改善しない場合には、変性した腱を処置する手術療法が検討されます。
ストレッチ例
予防のために
ゴルフ肘は正しい知識と習慣で予防できます。
✅運動前後のウォームアップ・クールダウンを習慣化する
✅正しいフォームを身につける
✅使用する道具の重さやサイズを適正にする
✅肩や体幹の筋力をバランス鍛える
✅作業環境を見直し、適度に休憩をとる
症状が軽いうちに適切な対処をすれば、慢性化を防ぎ良好な回復が期待できます。
肘の内側に痛みを感じたら、早めの受診をおすすめします。
当院のご紹介
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